2010.07.31 Saturday
ふくろうの啼く夜に。・27
離陸の時、気圧変化が堪えたのだろう。その眉根に皺が寄った。院長が手配してくれたおかげで、おそらくは二度と乗る事の無いであろうファーストクラスのゆったりとしたシートの上で、その手がキュ、と力を込めて握り締められている。隣に座っていながら何の手助けも出来ない――小龍はふと、哀しくなった。
(この苦しみを与えたのは、俺なのに)
自分さえ犯罪に巻き込まれなければ。木材の買い付けに行かなければ。こんな事態は起こらなかっただろうに――言ってせん無い事とはいえ、後悔の念は離れない。
「……お前のせいじゃねぇ」
小さく、ぼそりと。目を閉じたままかすかに紡がれた言葉。小龍の葛藤を見抜いたのか。やがてシートベルトを外してよいとの合図があった。小龍が外すと、大きく息を吐き、ぐったりとしたように背もたれに身を預けている。リクライニングさせ、毛布を肩までかけた。怪我人である旨を既に連絡してあるため、スタッフもそういう対応をしてくる。介助をする小龍を看護士か何かと思っているようだ。やがて供された食事だが、黒鋼は半分も食べなかった。
「食べないともたない」
「解っている」
普段黒鋼はよほどの事が無い限り食事を残すような事はしない。一緒のメニューを食べた小龍は何の異常も感じなかったから、相当状態がよくないのだろう。後からでもつまめるようにパンにサンドイッチのように挟んでペーパーに包んで手元に残した。用を足し、あとは『寝る』と一言だけつぶやいて黒鋼は眠りに落ちた。到着まではまだ何時間もある。本を広げたりしたが、退屈な事この上ない。小龍も寝る事に決めた。ちょっと額に手を当ててみたが、発熱はしていないようだ。軽く脈を取ってみたがさほど異常は見られない。そっとその手を毛布の中に戻し、小龍もシートを倒した。黒鋼の肩が冷えるとよくないのでさらに毛布を引き上げ、自分も包まって丸くなる。とはいえせっかくのファーストクラス、実はのびのびと足を伸ばして寝ていたりもする。
(……!)
毛布の下。外からはひじ置があったりしてそうとは解らない。だが確かに今、小龍の手はしっかりと黒鋼の手に包み込まれていた。
(……弱い)
握る力が、弱い。黒鋼自身の回復レベルをそのまま現しているようだ。甲に重ねられた手、小龍はすい、と引き抜いた。
「……」
無言で見詰めてくる紅い目。小龍は何も言わず、今度は逆に自分が黒鋼の大きな手の上に乗せた。そのままほんの少し、指に力を込める。黒鋼の手は本当に大きくて、完全に包み込む事は無理だった。
(俺が、護る)
今度は自分が。この傷つき果てた優しくも愛しい人を。そのまま眠った振りをしていると、自分の手の中で黒鋼の手がくるりと回転した。まるで握手をするように掌同士が合わさる。そこからじわり、と温かさが伝わってきた。
もう、放さないから。
もう、離れないから。
温もりに包まれるかのように、小龍もまた眠りの淵へ落ちていった。
*******************************
お知らせです。
今までご愛読いただきましたが、次回更新(最終話)をもってこのサイトを閉鎖する事にしました。理由はプライベートが忙しくなりすぎて、ここを放置し続ける事が苦しかったから。もちろんこれからも黒様と小龍&小狼、そしてさくらちゃんを愛し続ける事に変わりはありませんが、自分なりのけじめをつけたいと思います。8月中に更新、その後倉庫化とし、10月31日で完全閉鎖とします。今までご愛読くださいまして本当にありがとうございました。あと1話、全力で頑張ります。
(この苦しみを与えたのは、俺なのに)
自分さえ犯罪に巻き込まれなければ。木材の買い付けに行かなければ。こんな事態は起こらなかっただろうに――言ってせん無い事とはいえ、後悔の念は離れない。
「……お前のせいじゃねぇ」
小さく、ぼそりと。目を閉じたままかすかに紡がれた言葉。小龍の葛藤を見抜いたのか。やがてシートベルトを外してよいとの合図があった。小龍が外すと、大きく息を吐き、ぐったりとしたように背もたれに身を預けている。リクライニングさせ、毛布を肩までかけた。怪我人である旨を既に連絡してあるため、スタッフもそういう対応をしてくる。介助をする小龍を看護士か何かと思っているようだ。やがて供された食事だが、黒鋼は半分も食べなかった。
「食べないともたない」
「解っている」
普段黒鋼はよほどの事が無い限り食事を残すような事はしない。一緒のメニューを食べた小龍は何の異常も感じなかったから、相当状態がよくないのだろう。後からでもつまめるようにパンにサンドイッチのように挟んでペーパーに包んで手元に残した。用を足し、あとは『寝る』と一言だけつぶやいて黒鋼は眠りに落ちた。到着まではまだ何時間もある。本を広げたりしたが、退屈な事この上ない。小龍も寝る事に決めた。ちょっと額に手を当ててみたが、発熱はしていないようだ。軽く脈を取ってみたがさほど異常は見られない。そっとその手を毛布の中に戻し、小龍もシートを倒した。黒鋼の肩が冷えるとよくないのでさらに毛布を引き上げ、自分も包まって丸くなる。とはいえせっかくのファーストクラス、実はのびのびと足を伸ばして寝ていたりもする。
(……!)
毛布の下。外からはひじ置があったりしてそうとは解らない。だが確かに今、小龍の手はしっかりと黒鋼の手に包み込まれていた。
(……弱い)
握る力が、弱い。黒鋼自身の回復レベルをそのまま現しているようだ。甲に重ねられた手、小龍はすい、と引き抜いた。
「……」
無言で見詰めてくる紅い目。小龍は何も言わず、今度は逆に自分が黒鋼の大きな手の上に乗せた。そのままほんの少し、指に力を込める。黒鋼の手は本当に大きくて、完全に包み込む事は無理だった。
(俺が、護る)
今度は自分が。この傷つき果てた優しくも愛しい人を。そのまま眠った振りをしていると、自分の手の中で黒鋼の手がくるりと回転した。まるで握手をするように掌同士が合わさる。そこからじわり、と温かさが伝わってきた。
もう、放さないから。
もう、離れないから。
温もりに包まれるかのように、小龍もまた眠りの淵へ落ちていった。
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お知らせです。
今までご愛読いただきましたが、次回更新(最終話)をもってこのサイトを閉鎖する事にしました。理由はプライベートが忙しくなりすぎて、ここを放置し続ける事が苦しかったから。もちろんこれからも黒様と小龍&小狼、そしてさくらちゃんを愛し続ける事に変わりはありませんが、自分なりのけじめをつけたいと思います。8月中に更新、その後倉庫化とし、10月31日で完全閉鎖とします。今までご愛読くださいまして本当にありがとうございました。あと1話、全力で頑張ります。









